青山通り 緑化プロジェクト② ~公共空間における新たな植栽方法の提案~
「青山通り 緑化プロジェクト①」でご紹介したプロジェクトの植栽工事は、2020年2月下旬から進められ、3月25日に完了しました。
青山通りは、日本人にとって、洗練された東京を想起させる通りです。2020年にはオリンピック・パラリンピックのメインスタジアムである新国立競技場へのメインストリートとなる予定だった場所でもあります。しかし、税収減などによる予算が削られ、道路管理者による手入れが行き届かず、雑草が生い茂り、低木の脇にはゴミが捨てられているなど、“残念な植栽”が多く見受けられました。
これまでも、渋谷・原宿・青山地区の美しい街並みの保全活動を行っている非営利法人渋谷・青山景観整備機構(SALF)が関わり、花壇にお花を植えるなどの活動をしてきました。2020年オリンピック開催をきっかけに、さらに心地よい道路空間の創出のために、「DUTCH WAVE(ダッチウェーブ)の植栽方法を取り入れたいというご意向で、日本の環境に合った「街路緑化の新しい形」を模索する舞台にするべく新たな取り組みをすることになりました。設計・施工は、日本の代表的なガーデンデザイナーである吉谷桂子氏とQ-GARDEN小島が担当しました。
今回植栽をリニューアルしたのは、以下の3か所です。
① 渋谷 宮益坂上交差点・交通島
② 青山2丁目交差点 絵画館銀杏並木前の植込み(北青山1丁目~2丁目)
③ 青山小前歩道橋 南側の花壇(南青山2丁目)
【植栽コンセプト】
1.日本の首都の景観重要道路にふさわしいジャパン・クールなデザイン
2.各場所の環境や風景に溶け込み、年間を通して美しいと感じられる植栽
3.宿根草を中心としたローメンテナンスな植栽
4.化学農薬を使用せず、生物多様性にも寄与するサステイナブルな品種の選択
5.作業に参加するボランティアが、やりがいやよろこびを感じられる取り組み
植栽は、東京都心部の環境に合う品種、在来種を中心にセレクト。その土地の環境に合った植物を選ぶことで、ネイチャー・フレンドリーな維持管理が可能となります。草花の中でも、丈夫で侵略的ではない、四季の移り変わりを感じさせる植物を主に使用しています。何年も生育と開花を繰り返す宿根草とグラス類で構成し、毎年植え替えの必要がなく、大量のゴミも発生しませんので、環境への寄与も期待できます。
ダッチウェーブは、従来のガーデンの「植え替え」「花柄摘み」「施肥」「病害虫防除」等の作業を限りなく少なくしていきつつ、四季を通して美しさを感じることができる植栽方法です。ナチュラリスティックな植栽が特徴で、植物たちが少しの手助けで自活していけることを目指しています。植物が自然に枯れゆく美しさを堪能する感性も育みます。毎年継続的に、風土環境にあって「美しく」生き延びていける植物の選択も重要です。春から秋までにさまざまな変化のある品種。残りは常緑性があり、冬も裸地にならない品種を選んでいます。そして、オリンピック開催地として多くの観光客が青山通りに訪れると予測される真夏の時期でも、元気に花を咲かせるアガパンサス、バーベナ、オミナエシ等を中心とした構成となっています。
季節ごとに花を咲かせる多様な宿根草を植栽することで、蝶や蜂などの昆虫類を呼ぶ“緑の島”を増やし、周辺地域の<生物多様性の向上>にも貢献できます。そして、グリーンのある空間は、市民に緑に触れる機会を与え、<地域コミュニティの活性化>に役立ちます。緑地メンテナンスなどを沿道市民と協力し合い、ボランティアの活動が盛んになることが見込まれます。
この青山通りのプロジェクトは、税収入に依存せず、道路管理者と地域とが連携する、公共空間における新しい植栽方法を導入した事例となりました。このような植栽方法が広く認知され、日本国内の多くの公共空間に採用されていくと良いと考えています。
植栽の様子は、NHK・Eテレ『趣味の園芸』でも放送され、Q-GARDEN小島も番組の中で植栽デザインについて語らせていただきました。
<関連リンク>
◆メディア掲載:NHK ・Eテレ『趣味の園芸』2020年3月22日放送
◆WORKS:青山通り 緑化プロジェクト① ~「緑の環境プラン大賞」受賞~