横浜市 N小学校 ”学校ビオトープで環境教育”
都市化が進み子どもたちの身近な自然環境が減少している昨今、子どもたちの日常生活において、自然体験そのものが難しいのが現状です。2002年に、文部科学省は学校教育の中に教科とは別に「総合的学習の時間」を小・中・高校に導入し、その内容のひとつに環境教育をあげたことで全国の小学校にビオトープの設置が進んできました。また、横浜市では2014年に「横浜市民間保育所・学校等緑化助成事業」という、民間の保育所、幼稚園、小中学校等での緑化整備の助成を開始しました。その一環で、Q-GARDENは、2017年に横浜市内のN小学校にビオトープを施工することになりました。
N小学校からのご依頼は、校舎の裏に今は使われていない池があり、そこをビオトープに再生したいというものでした。事前に環境コーディネーターが生徒たちと話し合う授業を行い、そこで5年生3クラス分の生徒の意見を取りまとめた内容をもとにしながら、ビオトープの設計プランを考案しました。生徒からの主な要望は、生き物を呼びたい、花壇がほしい、滑りにくい通路、池に落ちた時の対策など。
AFTER
BEFORE
多様な生き物が呼び込むために、池の細長い形状と550㎝ほどの深さを活用し、浅い部分と深い部分を作ることにしました。池のコンクリートの上に土や麻の土嚢袋を積んで起伏をつくり、浅い深いに適した植物を鉢ごと水中に設置するなど工夫しました。この場所はこれまで近づくことが出来ないつくりとなっていたのですが、新たに観察デッキや橋を製作、回遊しながら観察できるポイントを設けることで池周辺の自然に親しめるようになりました。そして、現在ある石や粗朶(そだ)を使用してナチュラルな花壇枠をつくり、“花壇がほしい”という生徒たちの要望に応えました。
この地域の在来種の植物をセレクトし、子どもたちがそれらに気軽に触れられるような環境をつくることができしました。また、普段から美しいデザインのものに触れてほしいという願いから、自然素材の建造物でデザイン性を意識したビオトープに仕上げました。
ビオトープ(BIOTOP)は、本来その地にすむさまざまな野生生物が生息することができる空間のことで、「生物の生息空間」と訳されます。ギリシャ語で「生物」を意味するbiosと「場所」を意味するtoposの合成語で、ドイツの動物地理学者であるフリードリヒ・ダールが造った言葉であるとされています。ビオトープの本場であるドイツでは、工業化などに伴う環境問題が深刻化した1970年代頃からビオトープが注目されるようになり、1976年にドイツで自然環境の復元を盛り込んだ自然保護法が制定されたことから、政府や企業、市民が協力して森林や池などを整備するというビオトープ作り活動が広がりました。日本では1990年代頃から、小・中学校の校庭に自然風の水辺を作り、そこに生息する生態系を観察するといった環境教育の場としてビオトープ作りが流行しはじめ、ドイツのビオトープが自然の復元を目的として始まったのに対し、日本におけるビオトープは環境教育の場、癒しの環境作りというような目的が先行したようです。 |
<関連リンク>
◆横浜市 環境創造局 横浜みどりアップ計画 「横浜市民間保育所・学校等緑化助成事業」
※平成26年度から緑の維持管理費用(一部)の助成も開始されたようです。